薬物療法

薬物療法は、原因療法と対症療法に大きく分ける事ができます。

原因療法の薬は、症状を悪化させる原因を取り除く目的で用います。この薬は根本治療であり、例えば、菌の繁殖を抑える抗生物質が挙げられます。

しかし、現在使われている殆どの薬は、対症療法の薬で症状を抑える為の薬です。問題となっている症状は抑えますが、根本的な原因を取り除くわけではないので、症状の原因が取り除かれる前に、薬の効力が切れると症状がぶり返します。対症療法の薬の代表には鎮痛剤が挙げられます。

薬を飲んで、症状が抑えられている時に、無理しすぎて動きすぎると症状が悪化してしまう事もあります。薬物療法は、医師、薬剤師の指示に従い、用量、用法を守って服薬してください。

当院では、内服薬や湿布薬による薬物療法に加えて、リハビリ室にて、温熱や電気治療機器を用いて体液の循環改善をする物理療法。必要な方には、症状のある部位にかかるメカニカルストレレスの原因を、身体の動きの専門家である理学療法士が評価・治療を行う運動療法を組み合わせる事で、根本治療を目指しています。

シンスプリント2 治療

シンスプリントを根本から改善するための治療

土踏まずがつぶれている事が、シンスプリントの原因として多く見受けられます。そこで、土踏まず(内側縦アーチ)を作るための運動を紹介します。

①アイスマッサージ

紙コップで氷を作り、痛みのある場所に軽く押し当てながらマッサージを10〜15分程度行います。感覚が鈍くなってきたら、時間前でも終了してください。

②タオルギャザー


タオルを足の指で引き寄せるトレーニングです。

片足で10回たぐり寄せます。3セット行います。

たぐり寄せる時に膝が内側に入らないように注意しましょう

③チューブトレーニング

チューブを用いて、足首の外返し運動を繰り返します。1セット20回で3セット行います。

注意点は、膝は正面向けたままで、動かさない事です。

④踵挙げ運動

スタート位置は、両足の踵を揃えた、ハの字にします。そこから、つま先立ちになる様に、踵挙上を20回繰り返します。注意点は、踵挙上の時に、踵同士が離れないように気をつけて下さい。

⑤ストレッチ

写真のように、アキレス腱からふくらはぎにかけて、ゆっくり15秒〜20かけて伸ばします。

①〜⑤を毎日しっかりトレーニングして、早期復帰を目指しましょう。

練習を休む事を恐れたり、復帰を焦って、症状が悪化して、将来が駄目にならないように、当院リハビリ室では、患者さんの状態をしっかり確認して、適切な復帰のタイミングを見極めていきます。

シンスプリント

部活動をしている学生さんが、スネの内側が痛くなる事がよくあります。

これは、走り込みやランニングが練習メニューに多く入っていると起こりやすい印象があります。

比較的多くの方が、経験するので、我慢して放っておくと、重症化して『疲労骨折』を招く事になり、長期間スポーツを休止しないといけなくなります。

そうならない為にも、早く治療開始して重症化させない対処をしましょう。

『シンスプリント』
ランニングなどの運動後にスネの内側の真ん中付近から足首までの辺りに痛みが出る

特によく起こる時期
中学入学時、高校入学時に、部活動での練習メニューが急激に増えたり、強度が上がる事で起きます。
新チーム結成時や、冬場の基礎体力作りでの、走り込み中心のメニューで起きます。

原因
ランニングによるオーバーユース
硬い路面での練習
足首の硬さ
扁平足・回内足

治療~復帰まで
痛みが引くまでスポーツ休止(3~4週間)
休んでいる間に、電気治療やリハビリによる再発防止

インンターナルインピンジメント

インンターナルインピンジメント(後上方インピンジメント)は、肩外転90°+外旋のポジションで、棘上筋や棘下筋が肩後方の関節唇(受け皿)に接触して挟み込まれる事によって生じます。 肩甲骨の後傾が不十分であるとインンターナルインピンジメントの発生率は高まります。

インンターナルインピンジメントが生じている状態で投球動作を繰り返す事で、棘上筋や棘下筋(特に棘下筋)が関節唇との接触による摩擦によって裂け、次第に腱板(棘上筋や棘下筋)の部分損傷を引き起こします。

インンターナルインピンジメントの予防

関節唇との物理的接触を避けるには、常に動作中の関節唇(受け皿)と上腕骨の位置を適合させておく必要があります。その為には、肩甲骨の後傾(内転+外旋+後傾)ポジションの獲得と上腕骨の過度な外旋を防ぐ2つが必要になります。

①投球動作中(レイトコッキング期)における最大外旋時の肩甲骨の内転+外旋+後傾ポジションを獲得する

肩甲骨の内転(肩甲骨を背骨に引き寄せる動き)に対して上腕骨が相対的に過度に水平伸展したり、肩甲骨の後傾に対して上腕骨が過度に外旋すると肩後方で接触が生じます。自由度の高い上腕骨の動きに対応して、肩甲骨が追従する事で、関節唇(受け皿)の向きを適合できれば物理的接触が生じず、インンターナルインピンジメントを防ぐことができます。

小胸筋・前鋸筋の柔軟性低下や、菱形筋・僧帽筋中下部の筋力低下は、肩甲骨の動きを阻害しインンターナルインピンジメントの原因となります。該当する筋肉に対して、ストレッチとトレーニングが必要です。

②上腕骨の過度な外旋を防ぐ

外旋可動域増大の原因としては、後下方関節包の柔軟性低下が考えられます。肩後方のストレッチが必要になります。

また、胸椎後弯による伸展性の低下や、上位肋骨の下方回旋も、肩甲骨の外旋や後傾を阻害する要因となるため、胸郭の柔軟性の獲得も重要です。

烏口下インピンジメント

『烏口突起の下』『腕の骨の出っ張り(小結節)』の間で肩甲下筋腱が挟み込まれる事を言います。

投球動作では、フォロースルーの時に水平屈曲+内旋のポジションで、肩の前方に痛みや詰まりが生じます。

原因としては、投球動作の繰り返しによる、大胸筋や肩甲下筋・小胸筋や烏口腕筋の柔軟性低下、僧帽筋中下部線維の筋力低下に伴い、肩甲骨が外転・前傾・内旋位に位置する事で、烏口下のスペースが狭くなる事で、インピンジメントを誘発しやすくなります。

肩前方の筋群に対するストレッチと、僧帽筋中下部線維のトレーニングが必要です。

大胸筋

大胸筋は、ムキムキマッチョの胸板の部分です。

デスクワーク、パソコン、料理など、普段我々は、腕を前に出して作業している事が多く、大胸筋を使い疲労させています。大胸筋が硬くなり、柔軟性が無いと、肩コリや猫背の原因になります。

そこで、今回は、以下にご紹介するストレッチを4週間、実施してみて、姿勢に変化があるか体験してみます。

壁に手をついて、身体全体を少し前に位置した状態から、壁についてる手とは反対方向に身体を捻り、大胸筋が伸びてるのを感じながら15秒ストレッチします。さ

広背筋ストレッチ

広背筋ストレッチ4週間実施結果です。

 

可動域は良くなりましたが、姿勢の改善は見られませんでした。次回は、大胸筋のストレッチを追加して、4週間実施していきます。

 

 

肩峰下インピンジメント症候群

野球肩のうちの半分以上はインピンジメント症候群であるといわれ、今回はその中でも最も頻度の高い肩峰下インピンジメント症候群について解説していきます。

まずは、肩の構造について、ご理解していただきたいキーワードが幾つかあります。

肩峰・烏口肩峰靭帯・腱板・上腕骨大結節・肩峰下滑液包

肩峰、烏口突起、両者を繋ぐ烏口肩峰靭帯によって形成される烏口肩峰アーチと、その直下を通過する大結節及び腱板、肩峰下滑液包によって構成される機能的関節を第2肩関節といいます。

第2肩関節の機能的特徴は、烏口肩峰アーチが大結節の上方偏位を抑制すること、腱板を上方から抑えることで骨頭の求心性を高めること、腱板に生じる摩擦を肩峰下滑液包により軽減することです。

肩峰下インピンジメントは、大結節と烏口肩峰アーチとの間におけるインピンジメントです。

肩峰下インピンジメントの要因は、上方支持組織の癒着・後下方支持組織の拘縮・肩甲骨の機能不全などが挙げられます。

 

 

広背筋

広背筋は人体で最も面積が大きい筋肉です。
骨盤と肩甲骨両方に付着部を持ち、腕の骨(上腕骨)に向かって走行しています。

広背筋が硬くなって、柔軟性が低下してしまうと、肩関節拘縮や投球障害肩、腰痛、姿勢不良の原因のひとつになると考えられます。そこで、以下に数種類のストレッチを紹介します。

また、私自身が4週間毎日ストレッチを実践してみて、Before – After を評価してみます。

全てのストレッチは、15秒かけてストレッチしていきます。3〜5セット行います。

現在の私自身の、肩の可動域と姿勢です。

 

野球肩 〜インピンジメント症候群〜

野球肩とは、ボールを投げる動作から投げ終わるまでに起こる肩の痛みの事です。野球以外のスポーツでも、ハンドボール、アメフト、バレーボール、テニス、槍投げ、水泳など、オーバーヘッドスポーツといわれる肩に負担のかかる動作で起こりうる症状です。

特に10〜17歳の成長期に起こりやすく、原因としては投げ過ぎなどの、同じ動作の反復による過負荷が多くの割合を占めます。

一言で野球肩と言っても、痛めた場所や原因によって、様々な診断名があります。
(インピンジメント症候群、滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、棘上筋炎、腱板損傷・断裂、SLAP損傷、肩甲上神経麻痺など)

肩は非常に複雑な構造をしており、複合関節と言われいます。色々な病態が絡んで症状が起こっている事も多くあります。なので、正確な診断名を特定することが困難である為、総称して野球肩と呼ばれる事が多いのが現状です。

野球肩の大半は、インピンジメント症候群であるといわれます。インピンジメント症候群も数種類あるので、ご紹介します。

『インピンジメント症候群』とは?
インピンジメントとは、衝突、挟み込み という言葉の意味があります。
肩の動作時に何らかの原因で、骨と骨の衝突や筋肉、軟部組織の挟み込みを起こし障害や痛み引き起こします。
症状は、投球動作などで肩を挙げた時や捻る時に引っ掛かり感や痛みを生じます。

種類は大きく分けて4つ
①肩峰下(けんぽうか)インピンジメント
(subacrominal impingement)
②烏口下(うこうか)インピンジメント
(subcoracoid impingement)
③インンターナルインピンジメント
(internal impingement)
④前上方インピンジメント
( pulley lesion)

インピンジメントの起きる場所で分類すると、

関節の外で起きる
肩峰下インピンジメント
烏口下インピンジメント

関節の内で起きる
インンターナルインピンジメント
前上方インピンジメント

それぞれについては、今後詳細に解説していきます。